IRオフィサーのキャリア形成 
~パネルディスカッション~

オートバックスセブン
IR・広報部長 椎野 泰成

インテージホールディングス
社長室室長 上村 紗恵子

元ソニーIR 上場会社社外役員
IRドクター 越智 大藏

2016年12月15日、ベルサール東京日本橋で開催された、一般社団法人 日本IR協議会主催の「IRカンファレンス2016」において、株式会社マジカルポケット主催の分科会「IRオフィサーのキャリア形成 ~パネルディス カッション~」を行いました。当日は会場が満席になるほど多くのIRオフィサーにご来場いただきました。当日ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。(司会 : 株式会社マジカルポケット IRオフィサー紹介事業部 大澤 雅勝)

プログラム内容

プログラム名称 IRオフィサーのキャリア形成 ~パネルディスカッション~
内容 企業の持続的成長にとって重要な役割を果たすIRオフィサー。IROの資質や責任、仕事の面白さや醍醐味、求められる能力、経験、知識等について、現役および元IROが意見を交わしアドバイスをします。

講師 プロフィール

椎野 泰成氏椎野 泰成氏
株式会社オートバックスセブン
IR・広報部長
上村 紗恵子氏上村 紗恵子氏
株式会社インテージ
ホールディングス
社長室室長
越智 大藏氏越智 大藏氏
元ソニーIR
上場会社社外役員
IRドクター
目次
1. 現在までのキャリア
2. 企業の持続的成長にIRオフィサーがどのように貢献できるか
3. IRオフィサーの仕事の面白さ、醍醐味
4. IRオフィサーに求められる能力、経験、知識、資格
5. IRオフィサーとして心がけること

現在までのキャリア

それでは自己紹介をお願いします。まずは越智さんからどうぞ。

越智 大藏氏(以下越智) 社長室勤務を経まして、ソニーをやめたのが1986年、最後の6年が、エクイティファイナンスとIRでした。最後の6年の間の4年間は恵まれておりまして、ニューヨークに駐在になりました。もちろんこれは私が希望してのことなんですけれども、行くまでに約5年間必死に英語を勉強し、トップを説得し、1981年から4年間ニューヨークにおりました。33年間何らかの形でIRに従事しておりましたので、少しでも皆様のお役にたてるよう、そしてIRをしていたことが人生にとって幸せだと思えるようなお話をさせて頂ければと思います。よろしくお願いします。

ありがとうございました。続きまして、椎野さんお願いします。

椎野 泰成氏(以下椎野) 私は1992年に新卒で東京エレクトロンという半導体製造装置を主に扱っている会社に入社致しまして、97年の秋からIRの担当をさせて頂きました。2006年2月に東京エレクトロンを退社いたしまして、今に至るというところでございます。IRに関しましては皆様が一番ご存じの通りですが、2006年の当時でもまだまだこれからIRっていうのは拡大していくだろう、自分の感覚としてはこの仕事をしっかりしていけば食いっぱぐれないだろう、と思っていました。外の会社に出て勉強してみようというような思いで転職し、縁があって今の会社にお世話になって いるというところでございます。今日はどうぞよろしくお願い致します。

ありがとうございました。続きまして、上村さんお願いします。

上村 紗恵子氏(以下上村) インテージホールディングスの上村と申します。よろしくお願い致します。私は1998年に新卒で前の会社、三菱UFJニコスという会社に入社をしまして、最初の7年間ぐらいは現場のほうで与信審査の仕事などしておりました。社内公募みたいなものがありまして、そこから東京のIRのほうに異動になって、2年間ぐらいIRをやっておりました。前の会社がいろいろありまして上場廃止するということになりましたので、ちょうどIRの面白さがわかってきたということもあり、IRで転職してみたいということで、翌年2008年から現在のインテージホールディングスにお世話になっております。当社は、非常にスタッフ部門の人数が少なくて、広報であるとか、CSRであるとか、一緒くたにやっているようなところがありますので、何かしらそういったところでお話できることがあればと思います。

企業の持続的成長にIRオフィサーがどのように貢献できるか

ありがとうございました。今日は手元にご配布した資料にありますように、テーマ5つぐらい用意して、それを順番にやっていきます。最初に、越智さんのほうからお話を頂きたいと思いま す。よろしくお願いします。

越智 最初のテーマは、IRオフィサーは企業の持続的成長に(どのように貢献できるか)ということで、この持続的成長というのは今回のカンファレンスのタイトルですよね。私も第一セクションに出たんですけれども、塩野義の手代木社長が冒頭何を仰ったかというと、自分は経営企画の経験もあってIRを経験してきたと。それで社長におなりになったんですけれども、最初の一言が「トップになったら悪いことを誰も言わない」って言うんですよ。そうでしょうねえ。特に取締役は通常、会社法では2年でしょ。ところが今ほとんどの会社が1年任期ですよね。そうすると、社長の嫌がるようなことを言う取締役がいますか?総会の前に。もう重任できませんよね。私は社外監査役をやっていることもあってですね、監査役は4年なんです。比較的4年は長い。ですからいろんな取締役会出ても一番喋っているのは誰かというと、議決権のない社外監査役なんですよ。業務執行役員はほとんど喋らない。自分の領域以外の人のことについてはとやかく言わない。社外取締役に至っても、同じ業界の方ならいざ知らず、やっぱりいろんな方面から来られるじゃないですか。私の経験では大学の先生も結構来るんですよね。でもずっと聞いてましても、違うんじゃないかなと思うことがあります。ですから社外監査役というのは、4年の任期というのが強いです。

さて、今朝の手代木社長のお話も、欧州では非財務情報的な長期にわたる話を聞かれるってあっ たじゃないですか。統合報告というのはまさに将来ですよね。

統合報告はステークホルダーとの対話の中で共に作り上げていくんです。ですけども何にもない場合無理ですから、まずは私どもの会社はこういう会社なんだという説明をします。一つ参考になるのが、リクルート用のいろんな資料ありますよね。あれって結構将来のこと書いてあるんですが、問題は悪いことは書いてないんです。つまりリスクです。

統合報告というのは、共に対話をしながら作っていくわけですが、誰が対話をするかというと、まずはIRオフィサーです。もちろんトップも入ってきます。ですからこういう形で共にステークホルダー、特に長期の投資家の方々と対話をしながら作り上げていくということで、私は、IRオフィサーはトップにいろんなことを言える方々をトップに橋渡しする役目を担っていると考えています。トップは、はっきり申し上げて社内の言うことは聞きません。つまり社内には悪いことでも聞きますとまでは言っても、いざ言われるとプライドが高いですから、実際にはなかなか聞かない。にも関わらず、アナリストであるとか外部の投資家、特に海外の投資家から言われればかなり聞く確率は高いと思います。

越智さんの熱い思いがよく伝わってきました。椎野さんはどのようにお考えでしょうか。

椎野 はい、今日ご参加いただいている方もかなり知識も豊富な方も多いようにお見受けいたしますので、理論的なところはあまり申し上げません。やはり投資家にとってみると、また普通の個人投資家からしてみても、情報開示がしっかりしている会社の方が投資をしやすいということで、株価が上がりやすいというのはあるんじゃないかなと思います。午前中のセッションでもありました通り、投資家との対話というのは経営者にとっては壁打ちのテニスみたいなものですので、やってるうちに頭の整理ができてきて、どんどん戦略が練れてくる。我々なんかもIRのロードショーに行くと、帰ってきた後は、資料で説明が出来なかった、もしくは投資家からの質問に対してちゃんと回答ができなかったことに関して、トップが担当部門を呼んで、ここの部分は詰めが甘いからもう一回練り直せっていうようなことは必ずあります。IRがロードショーに行くと、宿題をもらってくるといって大体怒られるんですけれども、結果的にはそれでもう一段戦略が練られ、実効力が上がって結果が出てくると思います。結論として、持続的かどうかは別として、会社の企業価値の増大に貢献しているということは、やはり実感しています。

ありがとうございました。上村さんお願いします。

上村 少しそれに足して、という感じになると思うんですけれども、さっきお二方が仰ったとおり、IRオフィサーっていうのは、やはり外からの評価っていうのを直接知ることができる立場にあると思うんですね。ですから、経営者が裸の王様にならないように、外からどういう風に見られてるのかとか、何を求められてるのかっていうことを率直に伝える。先ほど越智さんが悪いことは耳に入らないみたいなことを仰ってましたけれども、時に嫌がられることはあるかと思いますが、やはりそれを経営に率直に伝えるという役割が一つあるのかなと思っています。それが伝わって、IRの活動に継続的に反映していくことが企業の成長に繋がる一つだと思いますし、さっき椎野さんが仰ったとおり、現場に対して、社外からどういう風に見られているのか、あるいは何を求められているのかということをフィードバックする、時には宿題を与える形になることもあるかと思うんですけれども、いわゆる外と中とを繋げる役割というものを持つのがIRオフィサーかなと思っています。

上村さんは社長室で社長の秘書をされてますね。

上村 そうですね、専属秘書もやっています。

トップとコミュニケーションがよくとれてるIRのケースだと思います。

IRオフィサーの仕事の面白さ、醍醐味

続きまして、IRオフィサーの仕事の面白さ、醍醐味というテーマについて、上村さんお願いいたします。

上村 そうですね、キャリアという点からお話しすると、自分の会社のことを網羅的に知ることができるというのは自分の今後のキャリアにとっても非常にいい役回りなのかなという風に私は考えています。当社にもいろいろなグループ会社がありますけれども、もしかしたら一部の役員よりも、その会社の細かい事業のことまで知っているかもしれないなと思います。やはり経営に非常に近い立場にいますので、私は社長秘書を兼任しているということもあるんですけれども、日々いろんなことが起こりますので、いろんな意味でエキサイティングな日々を送っています。

あとはそうですね、やはりワンオンワン・ミーティングが多いので、そういったところでいかに自分の会社っていうのを理解、そして共感して頂けるのかということです。今日来て頂いている方の中に当社のお客様の企業の方もいらっしゃるかと思うんですけれども、お客様にしてみればインテージというのが何をやっているのかというのはご存知ですが、やはり投資家から見るとヘルスケアもやっているリサーチもやっているというと、非常に分かりにくいとか中長期の成長が見えにくいとかご指摘頂いたりします。そういったことを根気よく対応してお伝えしていく、そしてそれが叶って株式の保有状況に反映されていくのが実感できたりするのが1つの醍醐味かなという風に思っております。

ありがとうございました。椎野さん、いかがでしょうか。

椎野 はい。ギュッと突き詰めていくとですね、経営の根幹に関われるというのはビジネスパーソンをやっていて、非常にやりがいのあることなんじゃないかな、と思います。今お話し頂いたものに付け加えて、3点程お話しさせて頂くと、まず長いことIRをやっていると投資家の担当の方も覚えたりします。引き続き会社を見てくれていたり、ずっとサポートしてくれるような人もいるんですね。場合によっては食事に行ったりもしますが、そういう人たちと繋がっているのがちゃんと出来ているということで会社の成長に貢献出来ていると思いますし、その辺が醍醐味なんじゃないかなと思います。

また、機関投資家だけじゃなくて、個人の投資家さんともコミュニケーションを取る機会がありますけれども、やはり個人の投資家さんの方が庶民的ですね。「兄ちゃん、こないだ株を買って優待券をもらったけども、(当社の場合はオートバックスですので)、タイヤ買って良かったよ。」、ということを言ってもらえたりします。株価が下がってくどくどとお叱りを受けたりということもあるんですけれども、個人の生活にも入り込んだ何かの価値を提供しているかもしれない、という風に感じることが出来るのもいいんじゃないかなと思います。

もう1つはですね、良くも悪くも会社の激動の時に関与出来る、ということもあったりします。それはやはり普通のビジネスパーソンをやっていても出来ないことであったりするということで、良いか悪いかは分かりませんけれども、IRオフィサーの醍醐味じゃないかなと思います。そういうことも含めて、IRの世界っていうのは皆さんご存知の通り、進化というか変化を求められて変化をしてきていると感じています。それに対応していくのに目一杯という感じがないこともないんですけれども、それはそれで目の前に人参がぶら下がっているというか、やらなきゃいけないことがあるのは結構面白いことかな、という風に思います。

IRオフィサーに求められる能力、経験、知識、資格

具体的な事例を挙げて頂いてありがとうございました。それでは次は、「IRオフィサーに求められる能力、経験、知識、資格」というテーマです。当社はIRオフィサーの紹介をしていますので、お手元の資料の中に、IRオフィサーのスキルをチェックするためのチェックシートを入れてあります。皆様も会社でご活用して頂いて、IRオフィサーの部下の方やアシスタントの方の今後の勉強のために使って頂きたいと思っております。それでは具体的に経験、知識、能力等について、椎野さんコメント頂けますか。

椎野 はい。まずテクニカルというかですね、本当に能力というかスキルという意味で言いますと、やはり我々が相対するアナリスト、投資家というのは理論的に数字をもとに、もしくはMBAのような知識を背景に質問をしていたりということがありますので、そういう人たちが理解出来る、そういう人たちが考えているような言語とかフレームワークに則ってお話し出来るようにするとベターなんじゃないかなと思います。従って、そういうビジネススクールのようなところで学ぶようなことは無駄ではないと思います。また、海外の投資家というのも多いですので、どうしても英語というのは求められるんじゃないかなと思います。私自身は、例えば越智さんのように非常に得意な訳ではないんですけれども、なんとかコミュニケーションが出来たりとか、書いてあるものはちゃんと理解出来て経営陣にフィードバック出来るとかのようなことは必要だと思います。

あと2つはですね、どちらかというと意気込みみたいなものなんですけれども、やはり自分の仕事が会社にとって大切だ、会社の価値の提供に貢献しているという思い込みが重要なんじゃないかな、という風に思います。いざという時にですが、トップが間違っているようなことを言った時にそれを正す勇気っていうのもやはり必要で、その強い力、強い心、というのがIRオフィサーには求められるんじゃないかなと思います。それの裏返しなんですけども、トップに近いとですね、トップにヘコヘコしているみたいな感じになってしまいますので、そうではなくて社内の人からもちゃんと協力を得られるというような気配りと、実際に情報を取りに行って整理してトップや投資家に話す力、トータルで言うとコミュニケーション能力というものになるんですけども、そういうものがだんだん高度なコミュニケーションには必要になっていくのではないかと感じています。

ありがとうございました。上村さんお願いします。

上村 大体、今椎野さんが仰られた通りかなと思うんですけれども、やはり当社は、IRの部門で個人も機関投資家も株主も全部対応していますから、個人だったら個人投資家向け、機関だったら機関投資家向け、株主だったら株主向け、ということでその対象によってコミュニケーションの仕方をかなり工夫しないといけない、という風に思います。そういった意味でやはりコミュニケーション能力が重要です。さっき椎野さんが仰った通り、機関投資家から出てくる会話そのものを、例えば個人の方や株主さんにお話しされても、「あなた何を言ってるの」という感じになってしまいますから、そういった人たちには逆にどういう風に言えば分かって頂けるのかというような工夫です。相手の立場に立ってコミュニケーション出来る能力というのは、やはりIRで一番大切なんじゃないかなと思います。

あとはこのチェックリストにある通り、チェックが沢山つくというのが良いことなのかと思うんですけれども、この中に1つないとすると、IRは制作物を作る機会が結構多いですよね。ですから、やはりクリエイティブな発想というのは1つ重要なポイントになるんじゃないかなと思います。これはただ単にIRをやっているだけでは磨かれるものではないと思います。ですから、そういった「ものを作る力」を身に付けさせるために、部下にスタッフを持っていらっしゃる方も本日はいると思うんですけれども、指導していくというのもあるかなと思います。あとはIRの範囲というのは会社によって様々だと思うんですけれども、経理財務、それから広報や広告あとは経営企画、最近でしたらSRですね。IR部門がSRも担当して下さいという話も出てくると思うので、そういった分野に関する知識の習得というのも、最近では非常に必要性を感じているところです。

上村さんの会社では、社長室の機能としては、IR以外ではどういうものがあるんでしょうか。

上村 社長室では秘書と広報IR、CSR、ホールディングス総務という5つの役割を、計6名でやっています。

様々な分野に広がっていて大変だと思います。椎野さんのところもIR以外を担当されているんでしょうか。

椎野 はい。私は広報とIRを担当しておりまして、その中で言うとSRとCSRも担当になっています。

ブランドは余り関わらないですか?CSR関係ということで…。

椎野 はい。CSRはブランディングの中の1つの柱には間違いないですけれども、ブランディングはマーケティングを中心とした部署と共に作っていくというような形でして、基本的なところはマーケティングが中心となって推進しています。

ありがとうございました。越智さんは、能力やスキルについてどのようにお考えですか?

越智 どういうバックグラウンドの人がIRオフィサーに向いているか良く聞かれるんですけども、1番目に言えるのは営業だと思うんです。営業はですね、人の心を掴まなければ商売出来ませんでしょう?これは、簡単には出来ないんですよ。時間がかかるんです。ところが、ファイナンスの話とか統計学というのは、その専門家でもないので、本さえ読めば出来るんですよ。ところが営業というのは相手の人がいるでしょう。ですから、私がソニーにいた頃はですね、IRの担当になる前に、2年間地方の販売会社に出向させるんですよ。そういうことをやっていました。

そしてもう1つ必要なのは、私の経験からいくと株価のテクニカル分析です。私は これをやった途端、自分のIRに対する考えに広がりが出てきました。要はですね、テクニカル分析というのはファンダメンタル分析でなくて、株価が上がるのか下がるのか、底なのか上なのか天井なのか見極めるんです。細木数子さんも当時全盛でした。やっぱり、誰でも将来を知りたいじゃないですか。何か会社がアクションをした時に、株価がどう反動するかというのにはテクニカル分析が有効です。まとめると、1つは営業のバックグラウンド。これはもう持って生まれたものがあるので、仕方のあるないがありますけども、努力して下さい。あとは株価のテクニカル分析。他にはもちろん、株式市場の仕組み。これ皆さんおやりになったと思います。それとあと英語ですね。これは私も今でも苦労しております。

IRオフィサーとして心がけること

越智さん、ありがとうございました。株価のテクニカル分析というのはなかなか気が付かない視点だと思いました。時間の方も押し迫ってまいりまして、本当であればテーマ5番の、次なるキャリアプランということもお話し頂きたかったんですけれども、最後にパネラーから、参加者の皆様にアドバ イス、メッセージを頂きたいと思います。キャリアプランについて、もしここでコメントがあれば一緒に合わせて頂きたいと思います。上村さん、最初にお願い致します。

上村 はい。メッセージというかですね、キャリアプランというところで少しお話をすると、やはりIRの専門家という形でキャリアを築いていくのか、もしくは社内におけるキャリアアップに繋げるのかという選択はあると思うんですね。本日は部下をお持ちの方もいらっしゃると思うんですけれども、私がいつもメンバーに言っているのは、他社でも自分のキャリアが通用するかどうかについて1年に1回、自分のキャリアを棚卸してみて、この1年間でどのくらい成長できたか、あとはどんなことが出来ていなかったか、そういったことを振り返ってみようということは話しています。やはり冒頭でもあった通り、今の時代、自分の会社がいつまでもあるとは限らない訳ですから、そういったことを少しやってみようということを話したりします。

あとは、これは大きい会社であればあんまりないのかもしれないですけども、当社のIRは小さい組織でやっているので、どの部門にも属していない仕事っていうのが、急浮上してきたりすることがあります。そういった時にそっちじゃない、こっちじゃないの、ということが発生する時もあるんですけれども、結構私は「じゃあやります」と引き取るようにしているんですね。引き取ることを面倒と感じるか、それとも面白そうだと感じるかは、自分の心の持ち方次第だということもありますので、主導権を先に取って取り組む方がやりやすいし、自分のキャリアにも役立つんじゃないかな、と思ったりすることもあります。

ありがとうございました。女性の立場から、他に何かコメントはございますか。

上村 そうですね、IRは色々なことを同時並行でしなければいけない時が、当社3月決算なので、特に上半期に集中します。そういう時に、シングルタスクの方だとですね、結構苦しいというか、しんどいと思うんですけれども、やはり女性の方がどちらかと言えば、個体差というような気もするんですけれども、マルチタスクな方が多いのかなと感じています。そういった意味では、あれもこれもそれも一遍にやらなきゃいけないことがIR にはよく発生するので、IRは意外と女性に向いている部分があるんじゃないかなと思ったりもしています。

ありがとうございました。続いて椎野さんお願いします。

椎野 今すごく良い話を聞いて、ほとんど言われてしまったような感じなんですけども、やはりIRっていう仕事は、午前中のセッションで素晴らしい経営者の方々の話を聞いててもですね、まだまだ改善の余地がある、欧米の事業会社と比べてもまだまだやれることはあるだろうということなので、ここは1つ1つ解決していく、レベルを上げていくということが大事だと思います。とにかくキャリア形成においてもそうですし、会社でもそうですね。日本の経済においてもそうかもしれないですけども、IRのスペシャリストとして、皆さんと一緒にスキルを磨いていきたいなという風に思っております。アドバイスという程のおこがましいものではございませんが、自分なりにまず長期の目標を立て、世の中の流れというものがやはりありますので、その中で自分のキャリアを考えた時にこういう風になっていきたいなととらえ、そのために必要なスキルは何か、行動は何かというのを考えないといけないと思います。それを踏まえた上で、この1年何を目標にしていこうとか、こういう流れで今年はこれだけはやらなきゃいけない、というようなことを共有する、というかまず言ってしまって予算をつけてしまう。そういうようなことをすると、振り返ってみるとちゃんと出来ていた、みたいなことはあるのかなと思います。今日このような席で話させて頂いたのも何かの縁ですので、私と交流したいという方がいらっしゃいましたら、個別にご連絡頂きたいと思います。

ありがとうございました。後程、希望者と名刺交換をお願い致します。最後になりますけれども、越智さんよろしくお願い致します。

越智 すいません。あの私自身が実はCFOを狙っていました。ところが、IRに移ったものですから、全くその道は途絶えて、その後ソニーをやめてドイツ系の医薬品メーカーに3年間行きました。その後、転職を考えたんですけれども、国内企業のヘッドハンターとかエクゼキュティブサーチっていうのは、主に外資系向けなんですね。そうするとIRなんて関係ないですよね。CFOにしても、「越智さん、財務というかCFOからしばらく 離れているじゃないですか。」と言われた結果、私はCFOを諦めてIRの道に行こうと決めました。そのきっかけは、証券アナリストの資格に50歳で挑戦したんです。頭が固くなってますので、なんと5年もかかりました。証券アナリストの試験というのは、その勉強の過程が本当に面白かったです。私は税理士とか公認会計士も受けましたが、それらは勉強の過程が面白くなかったんです。ところがですね、証券アナリストは、自分がIRをやっている時に分からなかったことが、どんどん出てくるんです。ですから、面白くなったら試験は通りますね。IRもそう。

今日の皆さんは既にIRの仕事をされているんであれば、IRのスペシャリストも悪くないなと考え、今の会社を全うされるということも立派なことだと思います。仮に定年まで全うされても、社外役員の口はどんどん出てきます。社外取締役、社外監査役、そして私のようにですね、70歳になってもこういうコンサルティングおよび上場企業の社外役員というのも出来る。 というのは、まさにIRをやってるからなんです。色々な業界の方が入っても、私は投資家と株主の視点を取締役の経営判断に活かしたいと。私は一流企業の会長でもなければ社長経験もないんです。ところが、投資家と株主の視点というのは、意外に持っている方って少ないんです。会社の社長になられる方って、営業で頭角を現した方、研究開発で力のある方、そういうある分野で上に上がっていった方なんですけれども、その方々が果たして投資家と株主の視点を持っているかというと、そんなことはないでしょ。今、日本の上場企業にはこれが求められているじゃないですか。また、皆様のキャ リアプランの中にですね、定年退職を全うされるというステップもあるでしょうけども、今の段階で移るっていう選択肢もありますよね。IRは非常に奥が深い。やることは一杯あります。だから、こんなに熱く語っているのは、是非皆さんにもこのIRの良さを分かって頂いて勉強してもらいたいんですよ。やっぱりインプットがなければ、アウトプットも無理です。経験だけじゃ駄目です。今やインターネットもあるじゃないですか。今日、例に出した本だって面白い本ですよ。ということで、今日は皆さんに対して激励と言いますか、エールを送ります。「よくぞIRの道に」。偶然か必然かは分かりませんが、偶然でもいい所にきたと思われたら良いかと思います。

ありがとうございました。IRオフィサーとして、越智さんの言葉を噛みしめたいと思います。本日は短い時間でしたが、皆様ご参加頂きまして大変ありがとうございました。

(お詫び:構成上の都合で、越智様のご発言を一部割愛させていただきました。)